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流線上のメリークリスマス

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 破綻した金融市場、増え続ける失業者、激発する凶悪犯罪、テロ、戦争、飢餓、etc。
 ワームがいなくなっても、とかくこの世は問題ばかり。街中を彩るイルミネーションも、俺の目には歪んだ本質を隠す虚飾にしか映らない。

「きれいでいいよね、こういうの」

 冷たくかじかんだ手に息を吹きかけながら、それでも相棒は浮かれてはしゃぐ。
 日が落ちた今、気温はぐんと下がり、俺としては一刻も早く暖房のあるところに入りたいのだが。

 歩道の一角に据えられた大きなクリスマスツリー。
 明日には片付けられてしまうツリーを、足を止めて見入っているのは、俺たちだけではなかった。

 家族連れ、恋人たち、友人同士。同じ空間にいても、彼らは俺たちとは別の世界に住んでいる。

「クリスマスイブかぁ……」

 相棒が何かを訴えるような目を向ける。

「言っとくが、金がないぞ」

 すぐ横を、大きなプレゼントらしい包みとクリスマスケーキを抱えた男が足早に通り過ぎた。待っている家族のもとへ、帰るのだろうか。

「ケーキとかプレゼントとかじゃなくてさ」
「じゃあ、なんだ」

 無愛想に問う俺に、寒さで鼻の頭まで赤くさせた相棒が笑った。

「メリークリスマス、兄貴」

 一瞬、何を言われたのか分からなくて。拍子抜けした顔で、相棒をまじまじと見やる。

「……それだけか」
「え、そうだよ。兄貴に言いたかっただけ」

 他意はない、と相棒。誰も彼もが今日この日、その月並みでしらじらしい台詞を口にする。
 くだらないお祭り騒ぎの、決まりきった一言を。

「言霊だよ。願いや想いってさ、言葉にすると叶うっていうじゃない?」

 いつ崩壊するかもしれない、危なっかしい平穏。この先に、何が待ち構えているのか予想もつかない。
 偽りでも、一瞬に過ぎなくても、今ある幸せに感謝してみるのも一興か。
 ひとときの間、目と心を楽しませてくれるこのツリーのように。

「メリークリスマス、相棒……」

 俺も言霊とやらを返す。

 言葉というのは、確かに力を秘めているのだろうと思う。
 俺がそう言ったとき、相棒は、まるで欲しかったプレゼントをもらったかのように、満足そうに微笑したから。


 END



※このパターン、ハロウィンの時もやったような・・・まあ、いいか(苦笑)。
『戦メリ』は、ワタシのバイブルです。
メリークリスマス(^^)
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