白夜の果てより愛してる

白夜の果てより愛してる(5)

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 降りしきる雪と高い木々に阻まれて見えなかった頭上が、ようやく開けた。眼前に海が広がり、穏やかな波が桟橋をゆるやかに打っている。
 頃合を見計らったように、雪も小降りになり、やがて止んだ。そして、代わりに天空に現れたのは華麗な光のシンフォニー。

「うわっ、本物だよ! 本物のオーロラだ!」

 空を見上げ、相棒がはしゃぐ。

「見事だな」

 俺も感嘆の言葉が思わずこぼれた。
 空から降りたカーテンは、メロディーを奏でるがごとく色と形を変えていく。まさにそれは、自然が織り成すパーフェクトハーモニーだ。

「虹のふもとには、宝物があるんだよね。オーロラのふもとにもあるかな」
「そんなもんあるか。だいたい、どこがふもとだ」

 毎回相棒はシッターのバイトで、子供たちから他愛ない知識を仕入れてくる。

「夢ないな、兄貴って」

 しょうがないなとでも言いたげに、相棒が大袈裟に息を吐いた。

「だったら、お前はどんな宝が欲しいんだ」
「年末ロトの当たりくじ」

 胸を張る相棒に、夢がないのはお互いさまだろう、と呆れてしまう。

「オーロラが出てる間に願いごとすると、叶うんだっけ」
「ただの発光現象に、か」
「あのさっ。もう少し、ロマンに浸ろうよ」

 相棒はむくれるが、流れ星とごっちゃにしている相棒の方がどう考えても間違っている。

 確かに、オーロラは美しい。しかし、どこか不吉だ。オーロラは災難の予兆であったり、死者の霊だという言い伝えもある。
 迷信を信じるつもりはないものの、少なくとも東京の空に現れたそれは、何らかの異変の前触れに思えてならない。

「あの夜も、こうやって埠頭から海を眺めたよね」

 オーロラの光だけを映す暗い水面に目を落として、相棒が呟いた。
 相棒が言う『あの夜』とは、白夜の世界へ行こうとした時のことだろう。

「波に揺れてる月をやるぜ、って。兄貴、ジーンズのまま海に飛び込んだね」
「昭和歌謡ネタはよせ。誰も知らん」
「あはは」

 ふざけて笑う相棒を見ながら、俺も口元が緩む。互いに過去を笑い飛ばすことができるほど、月日が流れた。

「あ、なんか浮いてる。ビンかな」

 ふいに、波間に現れた透き通ったものを、相棒が指差した。言われれば、中に物が入った小さなガラスビンに見えなくもない。

「ラブレター入りのメッセージボトルじゃない?」
「そんな、ロマンチックなものじゃなさそうだ」

 手を伸ばせば届く位置にまで、その透明な物は波に運ばれてきた。一瞥して、それが何であるかを把握した俺は、即座に相棒の腕を引く。

「帰るぞ、相棒。関わりたくないからな」
「えっ?」

 目を白黒させる相棒を促し、来た道をひたすら戻る。再び降り出した雪は、背後に残してきた海の中の物を白く覆い隠してくれるに違いない。後で、なぜ持ち帰らなかったのかとラボの連中に叱責されたとしても、とにかくあんなものは拾いたくない。

「ビンじゃなかったの、あれ?」
「ああ。氷漬けになった何かだ」

 険しい俺の表情から悟ったのか、相棒もそれ以上は聞いてこなかった。

「そっか、ナマモノは、検疫に引っかかるもんね」

 相棒はよく分からない理由で納得する。
 飛行機でオスロへ戻るので、あながち外れてはいないとしても、さすがにそろそろ俺も現実逃避したくなってきた。

 一体、世界に何が起きようとしているのか。
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