想が瞬を駆け抜けて

想が瞬を駆け抜けて(7)

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13.変化

 カブトは、すべてのゼクターを集めるという無茶な行動に出た。
 だがおかげで、大義名分を掲げてカブトを葬ることができる。
 ZECTに従わない者を狩る――それが、ザビーに与えられた使命だったから。

 影山は、ウカワームの部下のように振舞う自分の立場が嫌だった。
 けれど、ウカワームのバックには三島がいる。三島の命令に逆らうわけにはいかない。
 影山にとって最後のよりどころであるZECT。
 そこにしか自分の居場所はない。どんなことがあっても、自分はZECTに背くことはできないと影山は分かっていた。

 あの瞬間が来るまでは。

 ウカワームとともにカブトを追い詰めた古びた神社。
 そこに、ガリガリガリッとブーツの踵で地を削る音が響いた。

「あれは、まさか」
「……矢車」

 カブトが低く呟き、その名を影山も頭の中で繰り返す。
 影山の目に映ったのは、すっかり風貌が変わってしまったが、確かにかつての上司だった。
 部下たちを見捨てた矢車。影山もまた、そんな矢車を手ひどく裏切った。

 以前は兄のように慕っていた、大好きな上司だった。
 その反動だったのだろう。見捨てられたショックは大きく、矢車を陥れるZECTの計略に影山は加担した。

(どうして今頃……)

 混乱する思考を影山は必死に抑え込む。今は戦闘中だ。
 幸いザビーに変身している今の自分は、動揺が顔に現れる心配はない。少し安堵して、影山は改めて矢車を見た。

 矢車の風体は異常だった。
 片袖のない黒いロングコートという奇異なナリだけではない。
 目が、違う。落ち着きなくさまようその目に生気はまったく感じられず、以前の矢車の面影は、どこにも残っていなかった。

 何を見ているのか。何を考えているのか。
 矢車は影山のことなどまったく気にする様子もなく近づいてくる。

「貴様、パーフェクト・ハーモニーはどうした!」

 影山の口から、思わずそんな言葉が出てしまう。
 そしてすぐさまはっとして口をつぐんだ。

(バカげてる!)

 もう一度パーフェクトハーモニーを奏でよう、と言った矢車の手を払っておきながら、自分は何にこだわっているのだろう。

「もう、パーフェクトもハーモニーもないんだよ」

 影山のほうを見向きもせず、矢車は吐き捨てるように言う。
 その様は影山の心に深く突き刺さった。



14.喪失

 見知らぬライダーに変身する矢車を、影山は驚愕の思いで見つめていた。
 矢車はZECTに戻ったのだろうか。

「あいつはZECTの敵だ、殺れ!」

 訳が分からないままに影山はそう叫ぶ。
 『ZECTの敵』。それを聞いて、矢車は可笑しくなった。

(まだお前は、ZECTを信用してるんだ?)

「影山、俺と一緒に地獄に堕ちよう」

 容赦なく矢車は影山にキックを仕掛けた。避ける術もなくまともに食らった蹴りに、影山は倒れる。
 変身を解除し離れていくザビーゼクターを、影山は必死に止めようとした。

(ザビー!!)

 嫌な予感がした。今ここでザビーゼクターを手放したら、もう二度とザビーになれないかのような。
 ザビーゼクターが天道の手に収まるのを見た時、影山は全身の血が凍りついたようだった。
 しかしカブトの矛先はもう矢車に向けられている。矢車のゼクターをも奪おうとしているのだ。

(俺の、ザビーゼクターを)

 目の前で始まった天道と矢車と対決。
 だが変身が解けた今、影山はそれに加わることもできない。

「返せ」

 ぽつりと声が出た。

「俺のザビーゼクター、返してくれよっ!」

 気がつくと、子供のように叫んでいた。
 なりふりなど構わない。ただザビーを取り返すことで頭がいっぱいだった。

 カブトにすがりつく影山の姿に、矢車は冷めた目を向けた。
 泣いて頼めば望みが叶うというのなら、誰も苦労はしない。

(相変わらずバカな奴だ)

 ザビーに釣られZECTの狗に成り下がった元部下に、憐れみの気持ちは湧いてこなかった。

(お前もそろそろ地獄を見たほうがいいよなぁ)

 矢車はこれからのことを考え、わずかに笑った。
 瞳に、狂気の色を浮かべて。
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