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白夜の果てより愛してる

白夜の果てより愛してる(6)

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 オスロに戻ると、空港ではエミールが俺たちを出迎えて、というよりむしろ待ち構えていた。
 まさか空港に着いた途端、有無を言わさず車に乗せられるとは思いも寄らなかった。

 エミールは、ノルウェーの対ワーム研究機関『ボーヒネン・ラボ』のスタッフで、俺たちと懇意にしている男。
 白衣姿なのはいつものこととして、防護マスクをしたエミールを不審に思い、俺は眉を寄せた。

「オーロラ見たんだよっ。すっごくキレイだった!」
「早く戻りたいんだが。明日までに洗濯物が乾かなかったら、どうしてくれる」

 相棒は、エミールがアパートまで送ってくれると思っているらしい。
 俺の方は、相棒が買い込んだやたらかさばる土産だとか、旅行パンフだとか、二人分の着替えの洗い物だとか、もろもろの荷物を一刻も早く整理したかった。

「オーロラは良かったですね。洗濯はラボでしますから、ご心配なく」

 俺と相棒のどちらにも答えながら、エミールは車のハンドルを握り、先を急ぐ。

「まずは血液検査を。あとは、メディカルスタッフの指示に従ってください」

 難しい顔でマスク越しにそう告げられては、悪い予感しかしない。
 案の定、連れて来られたのは、ボーヒネン・ラボの検疫センター。白い防護服を着たスタッフに俺と相棒を引き渡した後、エミールは薬用石鹸で手を洗い、足早に部屋を出て行った。

「な、なんだよ。人をバイキン扱いして」
「いや。バイキンどころか、これは……」

 検査を担当するスタッフたちは皆、ゴーグルとマスク姿。いつか観た、ウイルス感染映画のワンシーンに似ている。

「えっ、俺たち、エ●ズじゃないよ。ね、兄貴!」

 ウイルスといえば、HIVしか思いつかない相棒は、そこで俺に振れば、あらぬ誤解を招くだけだということにおそらく気付いていない。

「ち、ちょっと、下着は自分で洗うからいいよ!」

 服を脱がせようとするナースに相棒は無駄な抵抗をする。
 俺たちの持ち物は、すべて滅菌処理。洗濯の手間が省けて助かるとはいえ、できれば静電気・毛玉防止のダ●ニーの柔軟剤を使ってもらいたかった。

 各種検査を受けた俺たちがやっと解放されたのは、数時間後のこと。
 医療棟のロビーでぐったり座っているところへ、マスクを外したエミールが笑顔でやって来た。

「感染は認められませんでした。よかった、安心しましたよ」
「いきなり連れてきておいて、それだけか」
「……すみません。実は、トロムソで感染症の報告があったもので」

 俺が睨み付けると、加賀美を思い起こさせる生真面目なエミールは申し訳なさそうに頭を垂れる。

「感染て、エ●●の?」

 相棒の伏字に、「ボラ」と入れるか「イズ」と入れるかは、人それぞれ。
 だがエミールが続けた台詞は、もはやシャレにならなかった。

「ワームから発見された、地球外ウイルスです」

 衝撃の告白を受け、「え、ちょっと、これコメディだよね」と前後不覚に口走る相棒ほどでなくとも、俺も内心焦りを覚えた。

「……未知のウイルスか。症状は?」

 ここで、俺までパニくっていたら話が進まない。

「病状は様々ですが、感染者は異常行動に走る傾向があります」
「タ●●●みたいな?」

 またも、相棒が伏字を使う。今回、「ミフル」と入れるのが正しく、「ドコロ」と入れるのは、間違いではないものの無理がある。

「共通しているのは、自分は無価値だと思い込む点です」
「それって、昔の兄……って!」

 俺はすかさず余計な事を言いかけた相棒の鼻をつまんだ。

(トロムソってことは……、アレのせいか)

 ひどいよ兄貴、と言う相棒の抗議は無視し、氷の海に浮かんでいたものを思い返す。
 氷漬けで漂っていたのは、ワームの腕の一部だった。

 感染経路不明、潜伏期間不明、病状不明。今のところ緊急性は高くなさそうだが、ワームから検出されたウイルスである以上油断はできない。

「我々は、その新型ウイルスを『ワーム』と名付けました」

 エミールは、さも重大発表であるかのごとく告げる。

(……まんまだろう)

 ワームかワームウイルスか、これから『』で区別するとなると紛らわしい。文字ならまだいいとして、「二重カギ括弧、ワーム、括弧閉じ」などと、いちいち言っていられない。

「ZECTとも連絡を取り合って、早急な対策を検討してます」

 どこか含みのあるエミールの視線を感じ、俺は即座に目を逸らした。

「あいにく、俺たちは忙しい」
「ああ、事業を興したんですよね。M&Mでしたっけ」
「Mじゃなく、Sだ」

 M&Mはチョコレート、というお約束のボケはどうでもいい。

「異常発生らしくてな。白いワームやら、黒いローチやら退治しなきゃならん」
「そう、ウ……ゴ……」

 ウ●虫とゴキ●リ、と続けようとした相棒は、「言うな」という俺の暗黙の制止に気づき、不自然に言葉を止めた。

「えーっと、そ……そう、 ウゴウゴルーガさ!」

 大昔に流行ったTV番組のタイトルなんぞ、誰も知るまい。それ以前にノルウェー人のエミールに通じるはずない、と突っ込むべきなのか。

「ZECTから一人、応援が来ることになってます。久しぶりの再会でしょ」

 おそらくエミールは俺たちを喜ばせようと、サプライズで今まで黙っていたのだろう。しかし、なぜか俺は背筋にぞわりと悪寒が走った。
 そして当たって欲しくなかった推測は、見事的中した。

「ミスター田所。彼が明後日、日本から到着予定です」
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