トライアングルハーフ

トライアングルハーフ(7)

 ←白夜の果てより愛してる(7) →トライアングルハーフ(8)
 ゆっくりと、刻は近づき、歯車は回っていく。
 破滅に向かって――。





 短く携帯の着信音がし、ディスプレイには「非通知」の文字。その後、オフィスの電話が鳴り、コール三回で切れた。

「……内通者からか、矢車?」
「らしいですね。あとはお願いします。瞬には、うまく言っておいてください」

 腕時計を見てから、大和さんにそう告げ、俺は執務室を後にした。
 この時間なら、今日はこのまま直帰になるだろう。さすがに、内通者との密談に瞬を連れて行くことはできない。人間同士の醜い争いなど、瞬には無関係だ。

 脱ぎ捨てたZECTの制服をハンガーに掛け、私服に着替える。退廃した街中でも、特にそれが顕著な繁華街へと俺は足を運んだ。
 辺りに漂うのは、酒と化粧の匂いと荒んだ空気だけ。
 華美に着飾った夜の女たちが、通りを歩く俺に誘いを掛けてくる。

「素敵なお兄さん、寄ってかない? サービスするわよ」
「非常にもったいないが、急いでるんだ」

 首に巻きついてくる腕をやんわりと外しながら、笑顔で断りを入れた。
 この付近を歩けば、誘惑は1人や2人に留まらない。金を落としていく男に、街娼としてすがるしかない女たちもいる。
 機能しない政府、水不足、劣悪な生活環境。すべてを作り変えなければ、もはや世界は救えない。

「……待ってたわ」

 ふいに甘い香りが鼻腔をくすぐる。女たちを丁重に退ける俺の右腕に、するりと白い腕が絡んできた。

「修羅……か」

 以前とは全く異なる彼女の装いに、思わず俺は呆然とした。
 薄物の上着を羽織り、体の線を強調するような黒いドレスに、ハイヒールのパンプス。派手でない程度にひかれたルージュが、つややかな唇の赤さを際立たせている。

「驚いた顔してるわね」
「……いや」
「この街では、こういう格好の方が目立たないのよ」
「そうだな」

 あでやかな表情で修羅が微笑するけれど、態度や口調まで変える必要があるのか。
 店に入ることはせず、俺たちは連れ添って歩きながら話を進めた。傍からは、ホテルを探している男と女にしか見えまい。

「ネオゼクトは、『天空の梯子計画』を乗っ取るつもりよ。織田は、たいした理想主義者ね」
「風間は?」
「さぁ、どうかしら。気ままな男だし」

 修羅の言葉に、俺は眉を寄せる。ライダーは、できるだけ敵に回したくないのだが。

「織田に賛同して、ZECT内でもどんどん離反する隊員が増えてるそうじゃない。ZECTのやり方に反感を持つ人々も多いわ」

 俺の腕に触れている修羅の指先が、一瞬ひんやり感じられた。

「あなたさえその気なら、ネオゼクトに引き入れてあげてもいいのよ……?」

 彼女の瞳に妖しげな炎が灯り、強い意志と艶めかしさを宿した視線が、俺を射抜く。
 並みの男なら、その魅惑に抗えなかったかもしれない。

「見くびるな」

 ドン、と修羅を突き離した俺は、冷たく言い放つ。

「俺に、色仕掛けは通用しない。他を当たるんだな」

 ZECTだろうがネオゼクトだろうが、目的が遂行できさえすれば、俺はそれでいい。くだらない勢力抗争には、興味がないのだから。

「修羅。お前が二重スパイだということは、大和さんに報告しておく」
「イヤだ。ただの冗談なのに」

 クスクスと笑う修羅。しかし真意は不明だ。
 この女も、信用できるわけじゃない。俺の周りには、俺自身も含めて、欺瞞と陰謀が渦巻いている。

 唯一、完璧に純粋なのは、人間とワームのハーフである、瞬ただひとり。



※1年ぶりの再開ですが、他の今までの話とかなり毛色が違うかもです(^^;
ダーク策士は、書いてて楽しいv
関連記事



【白夜の果てより愛してる(7)】へ  【トライアングルハーフ(8)】へ

~ Comment ~

>かのこ様 

先日はメールの文字化けでご迷惑をおかけしましたm(__)m
「トライアングル~」はいろいろあって、1年以上もほったらかしてしまったのですが、やっぱりきちんと完結させないとスッキリしないし・・・思って再開しました。
生暖かく見ていただければ幸いです(笑)。
コメントありがとうございましたv
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【白夜の果てより愛してる(7)】へ
  • 【トライアングルハーフ(8)】へ