トライアングルハーフ

トライアングルハーフ(9)

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 ネオゼクトとの抗争は、激化の一途を辿った。

 ワーム鎮圧はもちろんのこと、1ヵ月後に迫った『天空の梯子計画』の警備にも人員を取られる。そんな中で、まだ見習いとはいえ力を付けてきている瞬を、戦闘に赴かせるよう通達が出るのは、必然といえば必然だった。

 ZECT総帥の片腕とも言われる三島さんが、要請を直々に俺に告げる。

「……影山には、まだ実地戦闘は無理です! 命を落としかねません」
「Cブロックでネオゼクトと小競り合いが長引いている。ヘラクスが参戦したからな」
「ヘラクス……織田が?」

 大和さんからの指示ならば、なんとでも理由を付けられる。けれど、三島さんの命令では拒むこともかなわない。

「影山も含め、小隊を率いて行け。いいな矢車」
「……はい」

 瞬を非戦闘員とする請願は、聞き入れられず。促すように三島さんに肩を叩かれ、俺は頷く以外なかった。
 まだ、ワームが相手でないだけ幸運だったかもしれない。同族と戦うハメになれば、瞬がどう変化するか分からないから。

「俺はAブロックだ。こっちは、ドレイクと交戦してる」

 出撃を命じられた大和さんも、そう言って口元を歪めた。

「風間、ですね」

 ネオゼクトのライダーが2人。異なる場所で、わざわざ戦力を二分し、同時に行動を起こすとは。

(罠……か?)

 ふと嫌な予感がしたが、それを追い払って、俺はキュッと白い手袋をはめる。
 修羅の情報によれば、天道という男も、連中の仲間に加わったらしい。だが何を仕掛けてきても、ネオゼクトなど、ライダーの他は雑兵の集まりだ。

 ZECTに奇襲を掛けるという話はなかったし、仮に、修羅が真実を隠していたとしても、ZECTの警護は加賀美が務めている。大事が起こる心配はないだろう。

 不器用そうに戦闘服を身に付ける瞬の横から、俺は小声で伝えた。

「瞬、お前は離れたところで隠れてるんだ」
「え、ど、どうしてさっ。俺も戦えるよ!」

 他の部下たちもいる。大声を出すな、と俺は指を口元に当てて見せた。

「お前が戦う必要はない。約束しろ、いい?」
「う、うん」

 強引に瞬を納得させると、隊に号令を出す。

「装備の整った者から車へ向かえ。5分後に出発する!」





 隕石落下後の修復が追いつかず、いまだ手付かずの廃墟が、ここには多く存在する。
 ここも、そんなエリアのひとつ。それでも居住区に程近く、俺たちの銃撃戦は近隣住民を脅かした。

「見ろ、この退廃を! ZECTは、この地を見放した。復興する気さえないんだ!」

 ライダー・ヘラクスとなった織田は、クナイガンのアックスを手にして叫ぶ。
 瞬に交戦区域外へ出るよう促し、セクトルーパーたちに戦闘指示を与えた後、俺もザビーブレスをはめた。戦いは避けられない。

「言いたいことは、それだけ?」
 
 ヘラクスと対峙しながら、俺は変化していく。心も姿も、ZECTのライダー・ザビーへと。

「矢車、お前もこの世界を変えたいと願ってるんじゃないのか!?」
「それは、もちろん」

 力任せのヘラクスのアックスを、俺は右腕で受け流す。

「ZECTに救う力などない!」
「お前たちにもね」

 織田は依然として、馬鹿げた正義感に固執していた。熱血漢の織田の言葉に、哀れみさえ感じてしまう。
 人間には何もできやしない。ZECT総帥が下した決断は、俺にとって好ましく、唯一賛同できるものだ。

 『天空の梯子計画』は必ず実現させてみせる。邪魔する者は、誰であろうと排除するだけ。
 躊躇なく、ザビーのニードルをヘラクスの心臓に突き刺そうとした、まさにその時だった。

「悪いが、お前のかわいがっている部下を借りるぞ」
「……何?」

 ヘラクスがくいと首を動かして、背後を示す。

(まさか……瞬!?)

 戦闘中であることも忘れ、俺は退避しているはずの瞬の姿を探し振り返った。
 あからさまに見せてしまった動揺を、織田が見逃すわけがない。放ったライダースティングをかわされただけでなく、俺の守りが手薄になる。

「くっ!」

 振り下ろされたアックスは、ザビーとなった俺の横腹をかすめた。咄嗟に急所をはずすのが精一杯。

「ハッ! やはり修羅の言った通り、よほどあの部下が大事らしいな」
「貴様、瞬を……!」
「安心しろ、傷付けはしない。少し話をしたいだけさ」

 用事は済んだと言わんばかりに、ヘラクスは逃げを打つ。

「待て……!」

 伸ばした手の先で、いくつもの丸い血だまりが地面を汚していく。腹の傷さえなければ、追跡することができたのに。
 織田の撤退を合図にしたかのように、散らばっていたネオゼクトの兵たちも一斉に引いた。

「ちっ!」

 変身を解いて、俺はギリと唇を噛みしめる。

「隊長、大丈夫ですか!?」

 走り寄って来る部下たち。しかし、その中に瞬の姿はない。
 瞬は、ネオゼクトの手に落ちたのだ。
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