学園迷走サバイバル

学園迷走サバイバル(1)

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 強い者だけが生き残る、いわゆる、弱肉強食の世界。
 眉をひそめる人も多いけど、全体の発展という観点でみると、実は一番合理的。優秀種だけの世界ができあがるから。

 腕力、知力、etc.、何か優れた能力を持っていれば、生き延びられる。
 反面、俺のように何も力のない者は、非常に大変――どころでなく、文字通り、サバイバルだった。





「……あー、もう、まだ追ってくるし!」

 狭い路地裏に追い込まれた俺は、必死に逃げ場を探す。
 校門を出てすぐ、見知らぬ二人組の男にいきなり腕を掴まれて。ヤバい、と悟り、俺はブレスに仕込んだ護身用の麻酔針を撃った。

 かっこよく決まればよかったものの、外すのが、俺的お約束。長さ数センチの針は男のジャンパーを掠めただけ。それでも、虚をつかれたらしく、力の緩んだ手を振り払い、俺はなんとか逃げた。

 追いかけてくるのは、二人の若い男。
 プロか、それとも学校の連中なのか。ジャンパーにジーンズという背格好だけでは、判断がつかない。

『500メートル北へ、それから西に曲がれ』

 通信機を兼ねたブレスから、よく通る澄んだ声が俺をナビしてくれる。

「北? 北って、どっちさ。右とか左で言ってよ!」
『GPSで確認できるだろ』
「そんなヒマないってばっ」

 ちらと後ろを振り返れば、追っ手は、後方あと数メートル。悪いと思いつつ、俺は路上に置かれていたレトロな生ゴミバケツを、二人組みの方へ思いきり蹴り飛ばした。

 生ゴミをぶちまけながら、バケツはごろごろ転がり、「こら、何をする!」と、怒鳴って家から出てきたバケツの持ち主は、どうやら『武闘系』 らしい。
 俺にとって幸運だったのは、ごついガタイの家人の怒りの矛先が、俺ではなく、後ろの二人組に向けられたこと。

「また、お前らか! この付近での狩りは止めろと、言っとろうが!」

 びくりと体を竦ませたところを見ると、連中は学校の奴か。プロなら、一般人に関わることはしまい。
「ありがと、おっちゃん」と、心の中で手を合わせつつ、俺は走り出す。

「矢車さん、どっち行けばいい!?」
『次の路地を右。その後、ふたつめの道を左だ』

 人ひとり通れる程度の裏道を走り抜けると、後ろからまた足音が迫って来た。まったく、しつこい。

「次は!?」
『まっすぐでいい』

 迷路みたいで、自分がどこを走っているのか見当もつかなかった。

「影山、往生際が悪いぞ! 大人しく――」
「やられるかよっ!」

 すぐ背後で聞こえた声に、相手が同じ高校生と分かった気安さで、俺も応答を返す。が、背後を振り返る余裕はない。手を伸ばせば、今にも俺に届きそうな距離感だ。

「このっ」
「わっ、ちょ……!」

 力任せに肩口を引かれ、後ろにつんのめった俺は、もうひとりの奴に、学生服の腕を捕られる。万事休す、と思ったタイミングで、待っていた声が響いた。

「残念。そこまでだ。そいつから離れろ」

 開けた公道沿いにバイクを止め、小型銃を構える、俺のボディガード。
 端正で甘い顔立ちながら、瞳は肉食獣が獲物を追い詰めるときのような危うい光を放ち、口元には酷薄な笑みを浮かべている。

「俺は、殺人許可証を持ってる。引いたほうが、身の為だと思うけど」

 向けた銃はそのままに、もう片方の手で、黒いスーツの内ポケットからIDカードを取り出して見せた。
『ZECT所属 矢車想』――そのIDの意味は、この世界の人間なら、たとえ子供でも知っている。

 しょせん素人の高校生には、この脅しは強烈。「殺さないで」だの「スミマセン」だのわめきながら、転げるように退散していった。
 俺はほっと息を胸を撫で下ろし、矢車さんは、深い溜息を吐いて銃をホルスターに仕舞う。

「……ったく、呆れる」
「だよね。逃げるくらいなら、初めから襲って来なきゃいいのに」
「じゃなくて、お前にだ」
「え、なんで」
「弱すぎる」

 仮にも、自分の雇い主であるZECT総帥の養子という立場である俺に対して、矢車さんはちっとも遠慮がない。

 確かに、『知能系』でも『武闘系』でもない俺が、無力なのは認める。でも、だからこそ、矢車さんは俺を警護する任に当たっているわけだし。弱いといわれても、俺としてもどうしようもない。

「もう少し鍛えろ」
「矢車さんが守ってくれるんだから、必要ないじゃん」

 俺だって、自分の身くらい自分で守れるようになろうと、思ったことはあった。ZECTでいくらか訓練も受けた。ただ、いくらがんばっても、武闘系の最低レベルにすら届かない。
 知能系と武闘系、どちらもAプラスの矢車さんとは、違う。

 天は二物を与えず、というのは、絶対ウソだ。
 機知機略に富み、二十五歳という若さで、ZECTでも一目置かれる有能な指揮官。実戦では、常に第一線に立って成果を収めると聞く。もちろん、人並み以上の容姿はともかくとして、己の努力で、矢車さんはそれを成し得たのだろうが。

「守りきれなかったら、どうする」

 真剣な面持ちで、俺を試すように、確認するように、問われた。

「守りきれないことなんて、あるの?」
「まさか」

 即答する矢車さんに、なら仮定の話は無意味じゃん、ともっともらしく言い訳してみる。

 実際、襲われたのは今日が初めてではなく、危険に慣れっこになってしまったのかもしれない。
 けれど、それは矢車さんに絶対の信頼を置いているからに他ならなかった。



※矢車さん25歳、影山18歳設定の別世界パラレルです。
「力が絶対の世界」という設定は、石ノ森先生の『番長惑星』をベースにしてます。
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