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ISO800

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※突発的に、『白夜』のコメディが書きたくなりました。ISOについて、間違ってるところあったら見逃してください・・・。

『白夜』は、ノルウェーが舞台で、兄弟は対ワーム機関に所属してます。その傍ら、影山は兄貴を巻き込んで、「S&S Co. Ltd.」という害虫駆除会社を設立。田所さんもノルウェーに来ているという、トンデモ設定です(笑)。




「兄貴、聞いてよ! ついに、『S&S』がUSO取得したよ!」
「は?」

 年末も押し迫った十二月、相棒がまた訳の分からないことを言いながら、嬉しそうに駆け寄ってくる。
 その後ろに、田所さんがうさんくさい笑顔で付いてきているところを見ると、おそらくロクなことじゃない。

 俺は夕食の支度の手を止めて、キッチンから逃走したくなった。
 が、あいにく、フィスクスッペを火にかけている最中のため、動くことができず。ゆえに、この厄介な二人組に捕まることとなった。

「聞いてやる。聞いてやるから、手を離せ!」

 俺が逃げると踏んだのか、相棒は俺の左腕をがっちりホールド。スープが焦げ付かないよう、ときどきレードルで鍋を混ぜる俺の右手。

「で、USOって何だ」
「ほら、JISマークみたいなヤツ、取るって言ってたじゃん。見てよ、認定証!」

 もったいぶって相棒が見せたその証書には、独特のマークが表記されている。
 International Organization for Standardization(国際標準化機構)、通称『ISO』のマーク。

「……USOじゃなく、ISOだろ」

 ISOとは、要するに、格付けブランドのようなもの。これを取得していると、いい企業だというお墨付きがもらえるわけだ。
 そういえば、以前相棒が事業拡大のためにISOを取るだなんだと、夢みたいなことをほざいて騒いでいた気がする。

「いつの間に……。費用だって、かなり掛かったろうが。どこから出たんだ、その金は」
「だから。こちら、スポンサー」

 相棒が言う前から、「いや、俺は何も」などと謙遜しつつ、田所さんはコンロの鍋を覗き込んでいる。
 俺が問いただすのを予想して、この人を連れて来たらしい。

「今夜は、矢車のお手製シチューか。わざわざ済まないな」
「フィスクスッペです。田所さんが来ると分かっていれば、他のものにしたんですが」
「まあ、そう、気を使うな」

 にこやかに俺の肩をポンポンと叩く田所さん。
 本当に、田所さんが来ると分かっていれば、今夜はパンとジャムだけにしたものを。

 こんなことをやっていると、一向に本題に入れない。クッキングヒーターを切り、俺は相棒に向き直った。

「スポンサーと言ったな。費用は田所さんが払ったのか」
「貸してもらっただけだよ。でも、これで社会的信用もバッチリだし。これからいっぱい仕事も入るだろうから、盆も正月も返上で、馬車馬のように働いてよね、兄貴」
「ちょっと待て」

 正月はともかく、ノルウェーに盆はあるのか。いや、ツッコミたいのはそこじゃない。

「勝手にお前が作った借金で、なんで俺が巻き込まれなきゃいけないんだ」
「だって、S&Sは、俺と兄貴の共同経営じゃん」
「そもそも、そこから間違ってるだろう!」
「よせ、お前たち! 俺を巡って、喧嘩をしてくれるな!」

 そういえばいたな、というぐらい眼中になかった人が、俺と相棒の間に割って入る。

「田所さん、どうして影山を止めなかったんですか。金まで出して、馬鹿げてる!」

 俺の怒りの矛先は、田所さんにも向いた。

「人類は皆兄弟。助け合いの精神だ」

 人類ではなく、ワームの田所さんに、そう諭される。

「なんでこんなどうでもいいことのために、大金を」

 考えれば考えるほど情けなくなってきて、俺は深い溜息をついた。
 一応俺たちはワームを相手に戦っているはずで、会社経営が本業ではないのだが、そんな事実はこの二人の頭からきれいさっぱり消え去っているらしい。

「やっぱり、これからは副業の時代だよ。田所さんのそば販売とタイアップして、会社を大きくするんだ」
「いつリストラされるか、分からんからな。老後の貯えも必要だぞ、矢車」
「どうしてそこで、俺に振るんですか」

 どうやら、田所さんが自分のそば事業のために、相棒を焚きつけたというところだろう。
 確かに、ISO認証取得となれば、企業としての強みになる。しかし、こんないい加減な会社組織が認証されるほど、審査は簡単ではないはず。

「ん?」

 ふと、妙な点に気づいた俺は、相棒の手から認定証を取り上げた。
 ISOマークの下にある規格番号が、明らかにおかしい。

「なんだ、これ。ISO 800って……」
「やだな、兄貴。ボケないでよ。フィルムの感度のことだろ」
「ついに、矢車にも着々と老いが忍び――」
「……寄ってないんで。ご心配なく」

 フィルムの感度は、別のISOの話。ぼけてるのはどっちだ、と言ってやりたい気持ちをぐっと押さえ込み、俺は話を進める。

「ISO 800なんて、存在しない。規格番号は、たいてい4ケタか5ケタの数字だ」
「え。ど、どういうことさ?」

 さすがに、相棒も俺の言わんとしていることを理解したようだ。

「よく見れば、印刷も粗いし、つまり……」
「プリントゴッコで刷ったということか!?」

 田所さんの方は、理解したかどうか甚だ怪しい。しかも、プリントゴッコは既に販売を終了している。

「どこのコンサル会社に頼んだか知らないが。まあ、そいつは十中八九、詐欺だな」

 とどめの俺の宣告に、相棒と田所さんは顔面蒼白。だが、同情する気にはなれない。俺の許可なく、こんな暴挙に手を出す方が悪い。
 ともかく警察に届けて来い、と俺は連中をキッチンから追い出した。
 すっかり冷めてしまったフィスクスッペに、もう少し火を通したかったので。

「戻ってきたら、飯だ」
「……うん、分かった」
「すまんな」

 気落ちしている相棒に掛けた言葉に、余計なもう一人までも返事をした。

「まさに、ISOが嘘八百ってやつか」

 巻き上げられた金は、おそらく戻って来ない。
 相棒たちに悪いと思いつつ、呆れた顛末に可笑しさをこらえられず、一人でくっくっと笑う。

 今年も、あとわずか。
 馬鹿みたいに平和な日々が、来る年もまた続くことを俺は切に願った。


END
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