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学園迷走サバイバル

学園迷走サバイバル(10)

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 二人の男は、おそらくレベルAのハンター。やっとのことで外へ出られたと思ったのに、ここで捕まったら元の木阿弥だ。

「しつこい奴らだ」

 ふらつく足取りで、矢車さんはハンターたちに対峙する。
 矢車さんの銃は、拉致された時点で取り上げられた。武器なしで太刀打ちできる相手じゃないと、矢車さんが一番分かってるはずなのに。

「丸腰で、レベルA二人を相手にする気ですか」

 やたら丁寧な口調の男が、狙撃銃を矢車さんに向けた。俺については、ものの数に入っていないらしい。

「自殺行為だな、命を粗末にするのはよくない」

 剣を持った男が、面白くなさそうにふんと鼻を鳴らす。

「あいにく、死ぬ気はない」

 言葉と同時に、かざした矢車さんの左手にザビーゼクターが現れた。
 ゼクターは手甲のように矢車さんの手首を包み、鋭利な針を持つ武器へと形状を変化させた。

 怪我を負っているとは思えない瞬発力で、矢車さんは銃使いの男の懐に飛び込んだ。
 空気を薙ぐ音と甲高い金属音。ゼクターのニードルを、男が銃身を使ってガードする。二人の素早い動きを、俺は目で追うのがやっとだった。

「風間! 何を遊んでる」

 参戦した剣使いが、矢車さんのニードルを勢いよく弾いた。息もつけない攻防に横槍を入れられるなんて、この男も相当な腕だ。

「俺は早く報酬をもらって引き上げたいんだ。さっさと終わらせるぞ」
「まったく、あなたはいつもそれですね」

 剣使いの言葉に、風間と呼ばれた男が肩を竦める。そのやり取りを見ながら、矢車さんは再びじりと距離を詰めた。

「やはり、金で雇われたハンターか。雇い主は誰だ」
「秘密厳守は鉄則でしょう」
「言い値を出すなら、教えてやろう」

 鉄板な答えを返す風間と違い、剣使いのほうは真顔で取引を提案してくる。

「剣、いい加減にしてください!」

 風間に叱責され、剣という男は仕方なさそうに得物を構え直した。

 この妙な二人組をどうにかしなければ、逃げられない。何か武器になるものでもあれば、と周囲を見回した時、建物の残骸を踏み砕き近づく別の二人が目に映った。

「そこまでにしておけ」
「矢車さん、影山さん!」

 冷え冷えとした声にかぶせ、暑苦しくも熱血に名を呼ばれた。

 反ZECTのリーダーが、手にした銃を風間に向け、その背後で加賀美も銃を構えていた。
 どうして天道までいるのか腑に落ちないものの、ひとまず敵ではなさそうだ。
 
「こちらはレベルAが三人。お前たちに分はないな」

 天道がそう嘯いた。
 実力はともかく、反ZECTである天道はレベルEなのだが、その事実は俺の胸にしまっておく。

「……よく、ここまで辿り着けましたね。見張りはいませんでしたか」
「外で寝てる」

 殺してはいない、という天道の答え。
 風間はほう、と感心し、金にうるさそうな剣は、眉をひそめて刃を鞘に収めた。

「報酬は微妙な線だな。……風間、俺は下りる」
「そうですね。俺も、危ない橋は渡りたくないですし」

 あっさり戦線離脱を表明するハンター二人に、俺は拍子抜けしてしまう。
 ともあれ、戦わなくて済んだのは幸いで、闇の中へ消えていく風間らを追うこともなく、黙ってその背を見送った。

 風間たちが見えなくなると、矢車さんは力尽きたように地面に膝をついた。色を失い、憔悴した端正な顔。既に腕から離れたザビーゼクターが、心配げに上空を舞っている。

「矢車さん……!」
「心配ない」

 急いで傍に寄り、矢車さんの体を支えた。なのに肩を貸そうとする俺の手を払い、一人で立ち上がろうとする。

「行きましょう。エリアXを出たら、タクシーを呼べます」

 否応なく加賀美が矢車さんの片方の腕を担ぎ上げたので、すかさず反対側の腕を俺が受け持つ。両方から捕らえられては、今度は矢車さんも拒まない。

 天道と矢車さんは、あえて目を合わせなかった。
 瓦礫の隅でうずくまる何人かの人影は、天道らが倒したハンターだろう。俺たちは無言のまま歩き、石を踏む音と、荒い息使いだけが周囲に響いた。

「ZECTの恐ろしさが分かったろう」

 一瞬、天道が俺に耳打ちし、すぐ離れた。おそらく今の言葉は矢車さんには聞こえてない。

(ZECTの恐ろしさ……)

 エリアXでのことを思い返しつつ、俺は心の内で呟いてみる。ZECTが矢車さんを見殺しにしようとしたこと、地下迷宮に得体のしれない何かが潜んでいること。つらつら考えれば、確かに恐ろしい。

 それでも、矢車さんはZECTに身を置いている。だったら、俺もそうするまでだ。
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