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想が瞬を駆け抜けて

想が瞬を駆け抜けて(10)

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18.終わりと始まり

 影山は焦れていた。
 ザビーゼクターを天道から取り返すことは叶いそうにない。
 ザビーを失った今、自分はどうしたらいいのか。このままZECTを追放されたらどこへ行けばいいのか。

 不安と焦りがじりじりと心に重くのしかかってくる。
 普段なら耳を貸さない間宮麗奈の甘言につられたのも、そんな不安で目が眩んでいたからだろう。

『立川というワームを殺せ』

 それがZECTを裏切る行為であることに、影山は立川自身に指摘されるまで気付けなかった。
 麗奈は自分を捨て駒にしたに過ぎなかったのだ、と。
 だがすべてが、もう遅い。

 今まで共に戦ってきたシャドウから砲弾を浴びせられ、麗奈率いるワームになぶり者にされる。
 影山は絶望の思いで目を閉じた。

(なんで、こんなことになったのかな……)

 目を閉じて思い浮かぶのは、昔の記憶だ。

 早くに両親を亡くした影山は、あまり恵まれたとは言えない人生を送ってきた。
 ZECTという組織の存在を知ったのはほんの偶然から。まだ学生だった頃、ワームに襲われた影山を救ったのが、その時ZECTで実力を発揮しつつあった矢車だった。
 おそらく矢車は、そのことを覚えていないだろうが。

 学業を終え自分の進む道を考えた時、影山がZECTに入る決断をしたのには、少なからず矢車の影響があった。
 自分もあんな風になりたい、と強く憧れた。

 シャドウに入隊し、憧憬と尊敬の対象であった矢車と親しく言葉を交わすようになった頃。シャドウになかなか溶け込めなかった自分を、矢車は何くれとなく気にかけてくれた。
 その当時のことがまるで映画のコマのように、影山の脳裏で何度も何度も再生される。
 あの頃が一番幸せだったのかもしれない。

「影山!」

 耳に届いたその声に影山は目を見開く。

(……矢車? なんで)

 聞き違いでは、ない。闇に落ちそうな意識の隅で、影山は矢車の姿をとらえた。
 矢車は影山を助けようと走りこんでくる。
 起き上がりたかったが、傷を負った体は影山の意思通りに動いてくれない。

「つ……!」

 少し体を動かすだけで激痛が走った。
 諦めて視線だけを矢車に向けると、矢車は精鋭部隊と言われるシャドウを次々と蹴り倒していく。
 なぜ矢車が自分を助けてくれるのか、影山には分からなかった。

「影山、笑え」

 倒れたままの影山に矢車が近づいてくる。

「笑えよ」

 矢車の意図を測りかね、影山は問い返すこともできずただ矢車の顔を見つめた。
 どこか怯えた表情を滲ませる影山に、矢車は面白くない、とでも言いたげに目線をそらす。

 ワームを苦もなく蹴散らす矢車を目の端に映しながら、影山はなんとか体を壁際にもたれさせ座ることに成功した。
 助かった、という気持ちは湧いてこない。
 むしろ、得体の知れない恐怖が心の中を占めていた。



19.地獄の兄弟

 俺と一緒に地獄に堕ちるか
 俺の、弟になれ





 ワームを一掃した矢車は、自分について来い、と影山を誘った。
 何かの魂胆があるのかもしれない。
 少なくとも矢車は自分のことを恨んでいるはずだ。そう思い至り、影山は警戒した。

 しかし、結果的に自分からZECTを裏切った影山にもう帰る場所はない。
 差し伸べられる手があれば、それに無条件にすがるしか術がなかった。

 今の状況は、影山にとってこれ以上ないほどの地獄だった。
 だが、矢車と共に行く道は更なる地獄に続いているような気がする。

(もう地獄にだってなんだって堕ちてやるさ)

 覚悟を決めたかのように、矢車から投げて寄越されたゼクターを影山は手に取った。

「このゼクターは……?」
「俺と対になるライダーだ。ZECTのトップから押し付けられた」

 淡々とした矢車の言葉に影山は目をむいた。

「まさか! 三島さんさえ知らないのに」
「ホッパーゼクターの存在を知っているのは、ZECT上層部でも限られている。知らなくて当たり前だ」

 影山は驚きを隠せなかった。
 “ZECTのトップ” とは、加賀美新の父親・加賀美陸のことだろう。
 ZECTを放逐された矢車が、依然ZECTとつながりを持っていたとは。

「……ホッパーの存在意義と目的は?」

 努めて感情を押し殺しながら影山は尋ねる。
 矢車にどんな態度を取ればいいか、分からない。いろいろなわだかまりが、まだ胸の奥でくすぶり続けている。
 そんな影山の様子に、どこか満足げに矢車は答えを返す。

「ネイティヴを含めた全ワームの殲滅。そして、カブトとガタックのサポートもしくは安全装置」

 ネイティヴとZECTの癒着を知らない影山には、矢車の言っている意味が理解できない。
 そのことに気付き、矢車はやれやれというようにため息をついた。

「説明は後でしてやる。来るか来ないかだけ、今決めろ」

 強引な物言いに、影山は戸惑った。以前の矢車とは違いすぎる。

「ひとつだけ確認したい」
「なんだ?」

 面倒そうに、矢車は目線だけを影山に向ける。

「……ホッパーは、人間を守るためのライダーなんだな?」

 初めてまっすぐに自分を見つめてくる影山に、矢車の表情が少しだけ変わった。
 わずかに瞳が穏やかな色を見せている。

「そうだ。安心しろ」

 その答えに、影山は心の霧が晴れるのを感じた。

『安心しろ』

 元上司の言葉を、もう一度信じてみようと思った。
 たとえ、ZECTを敵に回しても。

 矢車に肩を貸してもらい、影山は歩き出す。

「矢車……さん。俺、あんたのこと、なんて呼んだらいい?」
「好きに呼べ」

 シャドウにいた頃とは何もかも変わってしまった二人だった。
 上司と部下で、裏切り裏切られ。新たな関係を築いていくのに、以前と同じ呼び方はふさわしくない気がした。
 気持ちの上で、全てを清算するには時間が必要だろうけれど。

 ふと、弟になれ、と言った矢車の言葉が甦った。

(弟、か)

 もともと影山にとって、矢車は兄のような存在でもあった。

「じゃあ、兄貴って呼ぶよ」

 まだ少しぎこちない笑顔を影山は浮かべる。
 矢車は何も言わなかった。
 それは、了承の合図なのだろう。


 END
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