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白夜行~想と瞬

白夜行 [第一夜]

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「さよならだ、兄貴」

 その後に小さく呟いた、相棒の最期の言葉が、忘れられない――。





 空っぽになったようだった。
 いつも俺の側にいた相棒は、もういない。

 相棒は俺に倒されることを望んだ。だから、俺もそれに答えてやった。
 それだけだ。感傷の入る余地などない。

 しばらくの間、動かなくなった相棒の体を自分の方へともたれさせ、ぼんやりと考える。
 なぜ、俺は白夜の世界など求めたりしたんだろう。馬鹿げている。

「『光』を求めるとしっぺ返しを食らう、と言ったのは、俺だったな……」

 俺は自嘲気味に笑った。これが、しっぺ返しか。

 外気の寒さのせいなのか、相棒に貸している俺の肩にぬくもりは感じられない。相棒の体がどんどん冷たくなっていく気がする。
 トクントクン、と微弱ながらもわずかに伝わってきた心臓の音。
 それも今はもう、聞こえてこない。

 コンテナに身を潜め閉ざされた空間で、見えるのは頭上の星だけだ。
 こんな風に俺たちは毎晩、空を見上げていた。
 白夜の世界に思いを馳せながら。俺たちにもつかめる光に焦がれて。

『あの星、すっごく輝いてるね。兄貴みたいだ』

 相棒は、よくそんな言葉を口に乗せた。

『……皮肉か?』

 己の今の状況を把握できないほど、馬鹿じゃない。
 だからこそ、相棒の素直な賛辞を受け入れられず、俺はいつも苦々しく思っていた。

『兄貴は輝いてるよ。自分では気付いてないかもしれないけどさ』

 どんなになっても兄貴は俺にとって星だから、と相棒は笑顔で言った。

『白夜の国に行っても、またこうやって星をみようね』
『星はよく見えないだろう。夜でも太陽が沈まないんだからな』

 にべもない俺の言葉に、相棒はうっと声を詰まらせる。

『じゃあ、太陽でいいよ! 兄貴は太陽!』

 ムキになる相棒に俺は内心苦笑した。決して顔には出さなかったが。
 俺はお前が言うほど、できた人間じゃない。
 お前を助けたのも、すべて俺自身のためだった。感謝されるいわれはない。

 なのに、お前が最期の瞬間にあんな事を言うから。

 思った以上に放心していたのかもしれない。
 俺はその時、周りから迫ってくる異様な気配に気付かなかった。

「ちっ!」

 数体のワームが星明かりの中に浮かび上がる。
 相棒と同じく、ネックレスのせいでネイティブに変わってしまった人間たちらしい。

 自我を失っているのか、獣のような呻きをあげて俺たちに近づいてくる。
 相棒の体を壁に預けると、俺は身構えた。逃げようにも、人ひとり背負ってここを突破するのは無理だ。

「お前ら、目を覚ませ!」

 一体のワームに威嚇するような蹴りを食らわせる。
 変身は、しない。戦うのはためらいがあった。
 この連中にもきっと、大切な人たちがいるのだろうから。

 相棒を背にかばいながら、俺は身を守るためだけの戦いに徹した。
 だが、次第に攻撃をかわすのに精一杯になり、相棒から引き離されていく。

「相棒!」

 動かない相棒にワームが狙いを定めた。

「どけっ!」

 目前のワームを蹴り倒し、相棒に襲い掛かろうとするワームに飛び蹴りを放つ。
 が、その瞬間、強い衝撃とともに俺の体はふわりと浮き上がった。
 壁を突き破り、ワームに殴り飛ばされ、重力に従って急速に落下する。下は、冷たい海だ。

 俺の意識はすでに途切れていたのだと思う。
 海に落ちる前に、頭の中に相棒の最期の言葉が響いてきた。

『俺、兄貴と出会えてよかった』

 苦しそうに笑みを浮かべてみせた相棒の姿が、水しぶきの中にはじけて消えた。





 体も心も、すべてが凍てついてしまったかのように感覚がなかった。
 体を動かそうにも、自由が利かない。
 どうにか重い瞼を持ち上げると、目に映ったのは病院のものらしい白い天井だった。

「……矢車さん! よかった、気がついた」

 すぐ近くで聞き覚えのある声がする。

(影……山……?)

 俺はゆっくりと首を回し、ベッドの脇に立つその男を見た。
 影山であるわけが、ない。混濁する意識を持て余し、俺はもう一度視界を閉ざした。
 そして、目を開ける。今度ははっきりと現実を見据えて。

「加賀美、か」

 寝かされたままの俺を心配そうに覗き込みながらも、屈託のない笑顔を浮かべる男。
 対ネイティブ戦のキーマンの一人。ガタックの資格者、加賀美新だ。

「大丈夫ですか? 海に落ちたって聞いたから、びっくりしましたよ」

 この寒空の下ですからね、と加賀美は身をすくめる。

「そういうお前も、ボロボロだな……」

 加賀美の頭には包帯が巻かれ、顔にも無数の傷と血の跡があった。

「ええ、天道も俺も。でも、もう終わりました」

 晴れやかな顔で加賀美は告げる。ネイティブの野望は砕かれ、すべて終わったのだ、と。
 加賀美の言葉に、俺は違和感を覚えた。

 ネイティブの黒幕は倒され、人間たちはワームにされる恐怖から解放された。
 だが既に、多くの人間がワームに変わってしまっている。元人間のワームにあふれたこの街で、何が終わったと言えるのか。
 そこまで考え、俺ははっとしてベッドから身を起こそうとした。
 全身に走る激痛に構わず、加賀美の胸倉をつかんで引き寄せる。

「影山はどうした!?」

 ワームに襲われ海に落ちた俺は、恐らくZECTに発見されたのだろう。
 ここは見覚えのある、ZECT直轄の病院だ。

 あの後、影山はどうなったのか。

「影山さん? 俺は見てませんけど」

 俺の剣幕に加賀美は目を丸くし、落ち着いてください、と言いながら、俺をベッドに戻そうとする。
 その時、まるでタイミングを計ったように一人の男が病室に入ってきた。

「親父……」

 呟く加賀美に、ZECTのトップである男は父親の顔を向けた。

「新、天道くんが呼んでいたぞ。これからサルに行くんだろう」

 あ、いけね、と加賀美は踵を返す。

「矢車さん、また来ますから!」

 慌しく出て行く息子を見送ると、加賀美陸は仮面のようにその表情を切り替えた。
 交渉を持ちかける時の顔、だ。

「もう少し寝ていたまえ。凍傷もあるそうだから」
「今さら……、何の用だ」

 俺は低い声で制した。
 関わりたくない男だった。何もかも失った今となっては。
 けれど不躾な態度に気を害した様子もなく、かつての上司は話を進める。

「ホッパーとしての最後の仕事の依頼をしようと思ってね」
「誰が……」

 吐き捨てるような俺の反応も想定内だったのか。加賀美陸は怯むことなく、続けた。

「報酬は、君が気にかけている人物、だとしたらどうだろう?」


※リクエスト、ありがとうございますm(__)m
ネイティブになった影山を倒したその後の矢車さんのストーリーです。暗い始まりですが、ハッピーエンド目指してv
妄想と捏造につき、ご注意を・・・。
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