兄弟のつぶやき

さくらげんそう

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弟のつぶやき


兄貴、お昼寝中。

「兄貴、兄貴ってば」
ゆすってみても返事がない。ただの屍のようだ・・・。

「・・・誰が屍だ」
あ、起きた。
目覚めたそばから不機嫌な兄貴の声。

「だって全然動かないからさ」
「眠ってて歩き回ったら変だろうが」
兄貴、曲解しすぎ。そういう意味じゃないんだ。

「まだ寒いのに、よくこんなとこで眠れるなぁって思っただけだよ」
「以前と比べればだいぶ春らしくなったがな」
兄貴が寝転がっていた土手の桜の木は、満開とはいかないまでも花が咲き始めている。

「桜が満開になったらさ、花見に来ようよ! あ、お弁当作るのはもちろん兄貴ね」
「・・・お前な」
ことさらはしゃいで見せると、兄貴は呆れた顔でため息ひとつ。

よかった、いつもの兄貴だ。

初春の風を受けて、少し青ざめて冷たくなった兄貴の顔。
眠っている兄貴は、あり得ないほど穏やかで・・・。儚くて・・・。
桜の花びらが舞い落ちる中、まるで、永遠の眠りに就いているようで・・・。

さっきの幻想を打ち消すように、俺はブルンブルンと頭を振った。

「お花見なんだから、豆腐はナシね。やっぱ、おむすび!」
「どこの世界に豆腐を持ってく奴がいるんだ」
そもそも花見になど行かん、と兄貴。

「ダメだよ! 絶対行く。そうしなきゃ俺、桜見るたび思い出しちゃうもん」
「・・・?」

嫌なイメージは追い払って。
いい思い出に塗り替えよう。

だって、せっかくの桜。
兄貴と過ごせる、一年で一番綺麗な季節なんだから。
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