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兄弟のつぶやき

北風と太陽

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兄のつぶやき


「暑いねー、兄貴暑くない?」
パタパタと手で扇ぎながら、さっきから相棒がうるさい。

まだ春先だというのに、最高気温は20℃まで上がるだろうという天気予報の予測はどうやら当たりそうだ。

「暑いならコートを脱げばいいだろう」
「えー、やだよ。せっかく兄貴とおそろいなのに」
兄貴が脱ぐなら俺も脱ぐけど、という相棒の台詞はあえて無視する。

「・・・北風と太陽の話を知っているか?」
我ながら、童話もないものだと思ったが、相棒に話すにはそのくらいのレベルがちょうどいい。

「北風と太陽が勝負をした。勝負の方法は、旅人のマントをどちらが脱がせることができるか、というもので・・・」
幼い頃に読んだ記憶を頼りに、俺は続けた。
だが語り出したものの、思いのほか覚えていない。

マズい・・・。どんな話だった?

詰まりがちになる俺の言葉に、相棒は「そうそう、それそれ!」と相槌を打つ。
いつからお前は、メイクアップ・アーティストになったんだ。

「子供向けの話なのに、教育上よくないよねー。北風も太陽もホモだったんでしょ。旅人の服を脱がせようなんて、スケベだよねー」

・・・相棒。激しく歪んだ解釈をしていないか?

少なくとも、そんな話じゃなかったと思うんだが。
異議を唱えたかったが、はっきりと話の筋を覚えていない俺には何も言う資格はない。

「・・・今日は暑いな」

俺はあいまいな返事をして、その会話を無理やり終わらせた。
黒いロングコートは、それでも脱ぐことはしなかったけれど。
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