兄弟のつぶやき

エイプリルフール

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兄のつぶやき


真夜中だというのに、この街は眠らない。
駅周辺は、若いカップルや会社帰りのサラリーマンたち、そして夜明かしを決め込んだ俺たちの同業者・・・もとい、宿無したちで溢れ返っていた。

あと10分程で、日付が変わる。

「あっ」
突然、相棒が間抜けな声を上げた。
「今日って、エイプリルフールだった?」
相棒の視線の先には、『エイプリルフールに彼をびっくりさせちゃおう♪』などと意味の分からない文字が躍るポスターがあった。

バレンタインやホワイトデーはしっかり覚えているのに、物品の受け渡しが絡まないイベントごとには疎いらしい。

俺たちのガキの頃は、エイプリルフールは別名『4月バカ』と呼ばれ、バレンタインよりも重要な日だった。
あの頃は、娯楽が少なかったからな。
いや。そんなことを口に出したら、また “若年寄り” などと言われそうだ。

何か、いい嘘ないかなぁ、と相棒はしきりに呟いている。
俺に吐(つ)くつもりなら、聞こえていたら意味がないだろう。

相棒はぽんっと膝を叩くと、くるりと俺の方を見て言った。
「俺、兄貴のこと大嫌いだから!」
「・・・・・・」

もしかして、それが嘘のつもりなんだろうか・・・?

呆れて押し黙った俺の沈黙を、失望のしるしと捕らえたのか。
「びっくりした? 嘘だよー、嘘!」
大成功とばかりに相棒はへらりと笑う。

激しく脱力を感じ、俺はため息をついた。
そしてちらりと、壁面に大きく表示された電光板の時刻に目をやる。

「・・・俺は、お前のこと、弟のように大事に思ってるぜ」
「・・・えっ!?」

案の定、相棒は鳩が豆鉄砲を食らったような表情を俺に向けた。
こらえきれなくて、俺はくっくっと笑いを漏らす。

現在時刻は、0時ジャスト。
嘘なのか、本当なのか。
相棒も、その時間の微妙なトリックに気付いたようだ。

「ちょ・・・、兄貴、それ反則!」
わめく相棒に、答えてやる気など毛頭ない。
「はっはっはっ」
今度は声に出して笑った。

たまには、こんな茶番もいい。
エイプリルフール――春の狂宴。
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