白夜行~想と瞬

白夜行 [第三夜]

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 ひと月余りの間、ZECTと共に俺はワーム狩りに日々を費やした。
 できる限り害を与えないように捕獲するのは、結構骨が折れる。

 ワームに変わった人間たちは、影山のように治療ポッドに入れられる者もいれば、投薬と注射を受けた後、通常の病室に送られる者もいた。
 人間としての意識を持っている者は危険がないとみなされ、たいていは病室止まりだった。ZECTの監視はしっかり張り付いていたが。

 よほど酷い状態でない限り、ワーム化した人々も基本的に自由の身。
 なのに、影山は依然集中治療室のポッドの中だ。
 影山の意識は一向に戻らず、何度様子を見に行っても、目を覚ますことなく眠り続けている。
 医者に問い詰めても、分からないと首を横に振るだけだった。

 だんだんと俺の苛付きは増してくる。
 目覚めない影山に。ZECTの狗として働く自分自身に。

「隊長、今日はちょっと厄介かもしれませんよ」
「その呼び方はやめろ。矢車、でいい」

 俺のすぐ後ろを歩くゼクトルーパーに、そっけなく言い放つ。
 ネイティブの集団がたむろしているというCブロックに、俺たちは向かっていた。渋谷廃墟、エリアXの目と鼻の先だ。

「で、何が厄介って?」

 先程から口を閉ざしてしまった部下に仕方なく振り向き、続きを促した。

「やっと、こっち見てくれましたね」

 まだメットをかぶっていないそいつは、にこりと笑って言う。
 どことなく昔の影山に似ているような気がして、気まずい思いで俺はまた顔をそむける。
 しかし今度は気にした様子もなく、そいつは答えた。

「Cブロックのワームは、元シャドウ隊員たちです。早くから三島さんに懐柔されてましたからね。自我を保ってたとしても、説得は無理でしょう」

 淡々と任務を語るその顔は、まぎれもなくZECTの兵士だ。
 やむを得ない場合は倒すしかありません、と、メットをかぶりながら俺に告げる。

「隊長。情けをかけたら、こっちがやられますよ」
「……その呼び方はやめろと言った」

 俺は雑念を払うようにライダーベルトを付け、目的の場所に急ぐ。
 最悪の結果にならないことを、心のどこかで祈りながら。
 地獄に堕ちた者の祈りなど、聞き入れられるわけはないというのに。





 Cブロックで俺たちを待ち受けていたのは、見覚えのある連中だった。

「これはこれは。矢車隊長じゃないですか」

 部下だった者たちはまだ人間の姿をとどめ、冗談めかして敬礼する。
 その背後には、一般人が数人捕らわれていた。人質のつもりだろうか。

「なぜ、こんなことをする?」

 ホッパーゼクターを左手に持ちながら、俺は静かな声で聞いた。

「争いのない世界を作りたい。それだけですよ」
「人間をワームに変えることで、か」

(馬鹿げている)

 俺の皮肉めいた笑みを認めると、連中はむっとして言い返す。

「今の人間の世界が “悪” なんです。三島さんは、人間に光の道を示してくれたんだ!」

 すっかり洗脳されてしまった元部下の様子に、俺は諦めの溜息をついた。
 救うことはできそうにない。

「矢車隊長。俺たちにそのゼクター、渡してくれませんかね?」
「なんだと?」

 ベルトに向かう俺の左手が止まる。

「ライダーは、俺たちが光を掴むのに邪魔、なんです」

 首をくいと上げて合図すると、そいつの横に控えたシャドウの何人かが人質のところへ向かった。手には当然銃が握られている。

「隊長! そんな要求聞く必要ありません」

 俺の背後からも、俺を隊長と呼ぶ声がした。
 ベルトをはずしホッパーゼクターを放り投げる俺に、ZECT側のトルーパーたちの驚愕の叫びが上がった。

「そんなに欲しいならくれてやる」

 さらにベルトも地に放る。
 信じられないといった面持ちの部下たちを、俺は手で制した。

 ベルトとゼクターを手にした元シャドウ隊員たちは、次々ワームへと変貌していく。
 俺は冷静にその様を見つめた。シャドウは13人。全員が今やワームだ。

 現在の部下たちに人質を保護するよう指示し、俺はワームの中に切り込んだ。
 たて続けに蹴りを放つ。鍛えた脚力は、生身のままでもワームにダメージを与えられる。
 倒す必要はない。ただ、捕らえさえすればいい。

「隊長っ!」

 切迫した呻きが聞こえ、俺は自分の詰めの甘さを思い知った。敵の中の一体は、ワームの姿ではない。

「嫌味かよ」

 俺は舌打ちした。
 キックホッパーが、トルーパーの首を絞め上げている。
 ネイティブはゼクターがあればライダーに変身できる。初めから、奴らの狙いはホッパーゼクターだったのだ。

「そいつを放せ!」

 俺はキックホッパーに渾身の蹴りを放った。まるで自分自身を攻撃しているような奇妙な錯覚。
 ワームが変身したキックホッパーは、両腕をクロスさせて俺の蹴りを受け止めると、間髪入れずジャンプした。

(マズい……!)

 勘で分かる。アンカージャッキを入れたキックが来る。
 咄嗟にかわしたわずか数センチ横でヒュッと緑色の風がうなった。
 派手な破壊音を立てて、地が陥没する。生身で食らったら、ひとたまりもないだろう。
 風圧で切ったのか、額から血が流れ落ちる。俺はそれを拭うこともせず、考えを巡らせた。

(どうする?)

「隊長! これで、早く!」

 やっと解放された喉を押さえ、咳き込みながらも、その部下は俺に『それ』 を投げて寄越した。

「これは……」

 受け取って、一瞬息を飲む。
 “あの時” 以来、俺の元を離れたその黄金色は、変わることなく誇らしげに輝きを放っていた。

 ――ザビーブレス。
 この場を生き延びるために託された唯一の武器を、俺は迷うことなく腕にはめた。
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~ Comment ~

>ありがとうございます 

コメント、ありがとうございますm(__)m
捏造激しいオリジナルストーリーですので、ちょっとビクビクなんですが・・・(^^ゞ
少しでも楽しんでいただけたらうれしいですv
どんどこ書いていきますので、またよろしかったらのぞいてやってください(^^)

 

オリジナルストーリー・・・ですよね?
物凄く上手に展開されていて続きが気になります
更新頑張ってくださいー
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