地獄兄弟は今日も平和

□ refraction -リフラクション- □

refraction(4)

 トルーパーたちが駆けつけるまで、影山はぼんやりとそこに佇んでいた。両腕は、矢車の背に回されたまま。
 救護班から離れるように言われ、ゆるゆると手を下ろす。その手に、べっとりと赤いものが付いていた。

(……血、だ)

 自分は怪我を負っていない。この血は、矢車のものだ。
 今あるものが、現実として考えられなかった。ただ矢車の最期の言葉だけが、頭の中で繰り返されている。

『ZECTを、信じるな』

 大事なもの全てが、崩壊してしまった気がした。

(……違う!)

 傍らに転がっていたマシンガンブレードを、影山は手に取った。
 初めて手にしたその武器は、ずっしりと重い。本来の持ち主であるゼクトルーパーは、救護班に搬送されたらしい。

「守らないと……」

 自分に言い聞かせるかのように、影山は呟く。

 守らないといけない。人類の希望である、天空の梯子計画を。
 ZECTを信じるな、という矢車の言葉は信じない。信じたら、矢車の死も認めなくてはならないから。

「俺、行きます……。矢車さん」

 額面通りではない、いびつなZECTの本質。見え隠れするそれに、影山は自ら目を塞いだ。
 なんであれ、矢車が守ってきた存在。ならば、同じように、自分も従うだけだ。





(雪……?)

 空から、白いものがフワフワと落ちてくる。
 影山はそれを取ろうと手を伸ばして、途中で止めた。なんとなく、今の自分が触れてはいけないようで。

 多数の犠牲者を出した戦いの中で、影山は今まで表に現われなかった戦闘能力を開花させていた。

 二重の裏切り者として、修羅の抹殺にも影山は手を貸した。
 血にまみれた女の姿に、何の感慨もない。矢車が倒れたときも、この女はこうして見捨てたのだから。

「君は、意外に使えるな」

 いつの間にか背後に、ZECTの幹部のひとりである三島が立っていた。

「これからも、ZECTのために働いてくれるだろう?」
「もちろんです」

 影山は三島に笑みを返す。矢車に向けた時とは違い、純粋な信頼からではなかったけれど。

「海なんて、そんなに綺麗じゃなかったな……」

 影山は窓から外の雪を眺めながら、ひとりごちた。
 少なくとも、水不足の解消にはなり、大概の人間にとって海は待ち望んだものだ。

 けれど、影山はもう、海を見たいとも思わない。どす黒く汚れた水面に興味など、誰が興味を持つだろう。

 矢車が見せてくれたあの幻の海だけが、影山にとって美しいと思えた本当の海だった。



 END


※ごめんなさい~。救いのないラストです(--ゞ
時間の流れ的におかしいところもありますが、お許しください。
影山がようやく悪に目覚めてくれて、TV版とつながったv
よかったよかった(違う!)
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Information

Date:2007/04/14
Trackback:0
Comment:2
Thema:二次創作:小説
Janre:小説・文学

Comment

* >ありがとうございます

コメントありがとうございます。
影山は、最初の構想では純粋な部下のまま矢車さんの後を追うハズだったんですが・・・書いてるうちに別な方向に(苦笑)。
でも、生き残ってもあの影山は精神壊れてます、きっと・・・(--ゞ
読んでくださり、ありがとうございました!
2007/04/15 【マーリン】 URL #- 

*

やっぱり、こうなるか…でも納得できる感じです。公式でも「影山は自分というものをもたない性格」と言われてましたし。毎回、楽しみによませていただきました。次の物語もわくわくしながら、待ってます!
2007/04/15 【】 URL #- 

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