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紅の箱舟(アーク)

紅の箱舟(1)

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 冷たい雨が降り出した。

 雨を避ける術はいくらでもあったが、矢車はそれをする気になれなかった。
 いっそ、すべてを洗い流すほど降ってくれればいい。

 『不協和音』と言ってのけた、影山のあの時の表情。己を拒絶し、向けられた視線は、今の雨より遙かに冷たく、矢車の心に浸透する。

(影山……、どうして、お前は……)

 かわいい部下だった。今でも、その気持ちは変わらないつもり、なのに。

 人通りの少ない場所を選んで、矢車は歩いた。
 本降りでなくとも、しばらく雨の中に佇んでいたせいで、雨粒は髪からポタポタと滴り落ちている。きっちりしたスーツも、既に色を変えるほどに濡れていた。
 こんな惨めな姿を、人目にさらしたくはない。

 いつもなら子供たちが大勢駆け回っている公園も、この雨ではさすがに誰もいないだろう。そう思って、公園の中を突っ切ろうとしたのだが。
 少年がひとり、ブランコをこいでいる。雨に打たれながらも、どこか楽しげに。

「……おい、風邪ひくぞ!」

 矢車は足を止めて呼びかけていた。雨にけぶり、少年の顔はよく見えない。

「平気だよ」

 雨の向こうで、少年の声だけがはっきりと届く。
 突然声を掛けられたことに驚きもせず。疑うことなど知らないような、澄んだ幼い声音。

 それが、突然、悲鳴に変わった。

(……ワーム!?)

 突然現れた一体のサナギ体ワームが、少年に襲いかかろうとしている。

「ちっ!」

 矢車はZECTの銃を取り出すと、即座にワームに撃ち込む。
 今の自分の武器はこれだけだ。ザビーには、なれない。

「逃げろ!」

 攻撃の間を与えずに、銃を撃ち続ける。同時に、矢車は少年を促して走り出した。

「後ろを向くな! 前だけ見て走れ!」

 この憂鬱な天候も、彼らにとっては幸運だった。やがて強くなった雨足の中で、二人の姿はかき消され、後を追うことはできまい。
 追撃の気配がないことを確かめてから、矢車は前を走る少年にストップをかける。

「もう、大丈夫だ……」

 肩で息をしながら、矢車は声を絞り出す。全速力で走った自分に、よくこの少年は合わせられたものだ。
 だが、顔を上げ、屈託のない笑顔を向けた少年を見て、矢車は言葉を失った。
 雨のせいでよく分からなかったが、その顔は――。

「影……山……」

 つい先ほど、自分を裏切った部下を、目の前に見ているような気分だった。





 ふいに誰かに呼ばれた気がして、影山は振り向いた。
 後ろには、自分に従うシャドウたち。だが、その誰も、あんな風に自分を呼んだりはしない。
「影山」と耳に馴染んだ声が、頭の中で再生される。

「隊長、どうかしましたか?」

 部下に問われ、影山ははっと我に返る。

「……いや。止まないな」

 視線を窓の外に向け、「雨」と、言い訳のように付け足した。





 思わず漏れてしまった自分の呟きに、矢車は苦笑した。
 確かに目の前の少年は影山に似ているが、年齢がまったく違う。どう見ても、この少年はローティーンで。せいぜい12か、13ぐらいだろう。

「……何でもない。それより、雨宿りしよう」

 少年がずぶ濡れなことに気付き、矢車は屋根が大きく張り出した家の軒下を示した。

「怪我はない?」

 ハンカチを差し出しながら、怖がらせないように優しく聞く。

「うん、平気。矢車さんだって、びしょ濡れだよ」

 簡単に髪と顔を拭いた後、ハンカチを返す少年に、矢車は眉を顰めた。名前を教えた覚えはないのに。

「なぜ、俺の名を知ってる?」

 知らず知らず、声のトーンが下がった。
 ワームに襲われていたこと。影山とそっくりなこと。全てを考え合わせれば、答えは自ずとはじき出される。

 胸の隠しからいつでも取り出せるよう、銃に手をかけた状態で、矢車は先を促した。

「君は、ワーム?」
「違うよ!」

 剣呑な雰囲気を漂わせる矢車に、少年は精一杯否定してみせる。

「ってゆーか、もともとはワームじゃなかった……」
「もともとは……?」
「初めは、俺、人間だった……と思う」

 矢車には少年の言葉が何を意味しているのか、分からなかった。

 ZECTに所属して随分経つが、組織自体に闇の部分が多い。探ろうとしたこともあったが、そのたびに三島から牽制が入った。無事にいたければそれ以上探るな、という暗黙の圧力。

 とりあえず、ZECTがワームに対抗できる唯一の組織であることに間違いはない。
 ならば、幹部に睨まれてまで嗅ぎ回る必要性を感じない。それが、これまでの矢車の立ち位置だった。

「じゃあ、今の君は、何?」

 少しばかり警戒を解いて尋ねる。それでも、油断なく少年の反応を窺いながら。

「……“カゲヤマ” だよ」

 矢車の驚く様をじっと見つめて、少年は言葉を続けた。



※矢車さん失踪から再登場までの間に何が起こったのか?
矢車さんが見た地獄は何だったのか?
皆様それぞれに考えていらっしゃるかと思います。書きかけの『想が瞬を~』とは別展開で、私も妄想してみました(^^ゞ
いつもながら捏造激しいのでご注意ください。
リクエスト、ありがとうございましたm(__)m
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~ Comment ~

>ありがとうございます 

コメント、ありがとうございました。
毎日来てくださっているなんて・・・嬉しい限りです(^^)
更新は、気持ちと時間がないとなかなかできないので、「書きたい!」と思ううちはがんばって続けていくつもりです。

 

更新が速いので毎日、欠かさずチェックしています。新連載も期待大!です。
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