ダブル★アクション

ダブル★アクション(2)

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「……影山隊長!」
「ああ、遅くなってすまない」

 なんだか俺じゃないみたいに颯爽と、「俺」はバイクに乗って現われ、ワームの前に絶妙のタイミングで躍り出た。

「来い、ザビーゼクター!」

 「俺」が呼ぶと、ザビーゼクターは心なしかいつも以上に愛想を振りまいて、周りを飛び回っている。ザビーの奴、中身が俺じゃないことを知っているくせに。

 いつもはいまいち決まらない変身ポーズも、我ながらサマになる。夕陽を背に立つザビーは、うさんくさいぐらいにヒーロー然としていた。

『なんで、夕陽背負ってんだよ?』
「ザビーの戦闘といえば、バックは夕陽と決まっている」

 呆気に取られる俺を、「俺」はまったく意に介さない。
 本体と中身が入れ替わったため、俺自身の台詞は今や二重カッコだ。

「……隊長! た、助けて」

 か細い声に振り向くと、またお前か、の隊員A。毎回集中攻撃を受けるとは、よほどワームに好かれているらしい。

 ザビーは大きくジャンプすると、隊員Aを取り巻くワームに、次々ライダースティングを決めていく。
 普段使わない体をこんなに酷使したら、明日は間違いなく筋肉痛だ、と俺は心で泣いた。

「俺が切り込んだら、A小隊は両脇から攻めろ。B小隊は背後から援護」

 きびきびとザビーは指令を出す。

 いつもとは違う俺の様子に、部下たちはさぞ驚いているに違いない。
 メットをかぶってるので顔は見えないが、ポカンと口を開けて呆けた様が、ありありと想像できる。

「戦闘においてもっとも大切なこと。それは、パーフェクトハーモニー。……完全調和だ」
「隊長!!」

 ザビーの言葉に、隊員たちはワッと盛り上がった。
 なまじ夕陽を背負っているため、まるでひと昔もふた昔も前の熱血青春ドラマ。

 とはいえ、シャドウの熱い団結により、思ったより早く掃除は片付いたので、良しとしよう。
 羨望の眼差しで駆け寄ってくる部下たちに暑苦しさを覚えたが、定時に帰れそうなことに、俺はともかく胸をなでおろした。





 昨日、ワームとの戦闘を終えた後のことは、疲れすぎて何も覚えていない。
 意識も朦朧状態でベッドに潜り込み、朝になったらこの筋肉痛だ。
 体調不良とかなんとか言い訳をして、今日一日休みをもらったのだが。

『鍛え方が足りないな』

 俺に取り憑いてるその声は、遠慮なく指摘する。
 自分でも分かっちゃいるけど、会って間もない相手に言われる筋合いはない。いや、よく考えれば、会ってさえいない。

「余計なお世話だ! それよか、いい加減、姿見せろ」
『……いいのか?』

 俺の怒声を受けて、声が聞き返す。
 何がいいのか分からなかったが、とりあえず俺が頷くと、声はスッと俺の体から離れた。

 それは、ひどく異様な光景だった。何もない空間に、まず両足が目の高さぐらいの位置に現われて、その少し下に、頭から腰までが映り込む。
 ぶっちゃけ、上半身と下半身がまっぷたつになって、上下逆さになってるというスプラッタばりの奇妙さ。でも、体は血肉でできているわけではなく、まるで砂山のように脆く、さらさらと床の上に砂をこぼしている。

「うわっ、ちょ! タンマ!」

 急いで、砂から敷物を死守しようとしたが、すでに遅し。通販で買ったお気に入りのカーペットは、無残にも砂まみれ。
 土足厳禁で、極力汚さないように気を付けていた俺の今までの努力は、あっさり無に帰した。
 失意体前屈の俺に、砂の男はすまなそうに声をかけてくる。

「やっぱり、ショッキングだったかな」
「……俺の、19,990円のカーペットが……」

 毛の中に入ってしまった砂をどうしてくれるんだと、泣きたい気持ちいっぱいで、俺は砂男に目を向けた。
 よく見ると、そいつはスーツなんか着て(砂だけど)、俺より年上っぽい整った顔立ちの(砂だけど)、砂男だ。

「俺の名は矢車、だ」

 砂男と言うな、と目が訴えている。
 こんな取り込み中のところに、あろうことか、ノックしてドアを開けて入ってくる不運な奴がひとり。

「影山隊長、体調不良って聞いて……大丈夫ですか?」

 またもこいつか、隊員A。なにげに、台詞にシャレが入っているところが心憎い。

「な、なんだ!? お前っ」

 隊員Aは、砂男、もとい矢車の姿を見て悲鳴を上げかける。
 矢車は素早く背後に回り込み、隊員Aの口を押さえたが、それはもちろん砂の手で。もごもごと砂を口に詰まらせる哀れな部下。これは一種の拷問に違いない。

「いつだったか、お前は影山の中傷をしていたな。……上官侮辱罪って知ってる?」

 どことなく矢車の雰囲気が変わった。
 優しげな笑みはそのままながら、少し冷酷になったような気がする。砂の服も、いつの間にかスーツではなく、マントに変わっていた。

「影山の評判を落とすために、お前が色々小細工をしていたのは分かってる。シャドウ隊長を取って代わろう、って腹だろう?」

 矢車の言葉に、俺のほうが驚いてしまった。なぜ、そんなことまで知っているのだろう。
 隊員Aは返事ができない。なんせ、砂が口いっぱいに入ってるもんだから。

「無事にZECTにいたかったら、この部屋で見たことは誰にも言うな。いい?」

 脅しを含んだ甘い声に、隊員Aはこくこくと首を縦に振るばかり。
 真っ青になって部屋を転がり出る隊員Aの後姿に、後で掃除機を持ってきてくれるように頼んだが、聞こえていたかどうかは怪しい。

「矢車……さん、なんか性格変わってない?」

 一応年上らしいと思ったので、「さん」付けで呼ぶことにした。

「完全作戦。パーフェクトミッションのためさ」

 ニヤリと、矢車さんは悪そうな砂の顔で笑った。



※なんか・・・続きます。なんなんでしょう、コレ・・・(--ゞ
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~ Comment ~

>ありがとうございます 

シリアスを書いていると、ギャグが書きたくなってきて、つい書いてしまった話です。
前後編くらいの予定だったのに、なんでまだ続いてるんでしょう(苦笑)。
皆様の反応が怖いんですが(^^ゞ
温かいコメント、ありがとうございました!

 

シリアスな「紅の箱舟」の後で読むと、ギャップが凄い。楽しさ倍増。矢車さんもノリノリ。イイ!ですね!
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